話題の「ティール組織」でセルフ・マネジメント(自主経営)組織の在り方について多々語られていたので、10年近くセルフ・マネジメントな組織に身を置いてきて感じたことを書いてみました。
アメもムチもニンジンもイス取りも無ければ、人間関係で悩みにくい
仕事の悩みの○割は人間関係、とよく言われますが、ノルマや社内競争も無く、上司部下も無いパラレル(フラットというよりも)な組織では人間関係の上での悩みが生まれにくいと感じます。無為自然に近い環境では自らのクセが顕になりやすく、むしろ内省がしんどいですね。
セルフということで必ずしもマイルストーンが他から用意されるわけでもないので、自ら道を作りたいけど作り方が見えてこない、もしくは思う様に行動に移せない、という葛藤にはハマりがちです。ここに自主経営「組織」である意味があって、一人だと袋小路にハマってしまうところを、互いにセルフ・マネジメントの経験がありその苦労が分かるメンバー同士での互助の精神が働くことで、結果何とかなるかな、というわけです。
評価主義のアンラーニングとラーニング習慣
ティール組織でも「助言プロセス」という言葉で紹介されている様に、セルフ・マネジメントだと評価や指示が無くなる分、メンバー間のコミュニケーションの多くが助言の類になります。あくまで助言であって、取り入れるか取り入れないかは本人の決断次第です。
問題はその助言を受ける態度にあって、評価ありきの教育、加点主義って最高、みたいな教育をずっと受けてきていると、人の助言がなんだかケチをつけられている様に思えてきてしまって、素直に受け入れられなくなってしまう。
私も当初、「いやでもそれはこうじゃないっすか」みたいな反論を食い気味にしてしまった経験が少なからずあります。
当たり前と言えば当たり前なのですが、本来的には事業ファーストで考えれば、成果にコミットするものであって、そこに加点も減点も社内評価も何も無いわけで。
自らの事業を進めるにあたって、そうした余分なノイズが無いことで、事業に対して純度の高い動機づけが出来るというのが、セルフ・マネジメント組織の特徴の一つとも言えます。
そんな中では助言の聞く姿勢が謙虚さのバロメータであり、いかに評価主義をアンラーニングできるかで成長速度が大きく変わってくる様に思います。
こう書くとやっぱり日本の学校教育って社会に出てもさほど役に立たないのでは、と断じたくもなりそうですが全くそうではなく、少なくとも私にとっては自学が抵抗なくやれるという意味では大いに役に立っています。
変化の激しい昨今で言えばセルフ・マネジメント組織に限らない話でもある様にも思いますが、変化に対応する組織をつくるのは、各人が自学によってアメーバのように知見を広げていくこと。
息を吸う様に、というと大げさではありますが、受験勉強の時に地元の図書館で机に向かっていた分、自学へのハードルは下がっていると感じます。私の場合だと、Excel・コーディング・機器トラブル・テクノロジーのトレンド・財務会計あたりは社内でよくヘルプの声がかかります。
各人がそうしたコンピテンシーめいたものを持っていて、これについてはこの人に聞こう、というので社内の誰かしらの人の顔がパッと思い浮かぶわけです。特に新しい分野ほど若い人の方が抵抗なく取り入れられるので、年の功の逆、も多分にあります。
オンオフ切り替えの「有無」が選べる
オンオフの時間をきっちり分けたい人、切り替えるのが面倒な人。
これはもう両方のタイプの人がいて、その人に合わせた時間配分の問題ですよね。
上司からの指示が無い、タスク、スケジュールを自分で決めるセルフ・マネジメント組織においてはどちらでも働ける裁量があります。
平日は定時で切り上げて土日も普通に来る人もいれば、平日にきっちり終わらせて土日はちゃんと休む、という人もいて、私の場合はオンオフの切り替えをいちいち意識するのが面倒に感じるので、平日はほどほどで切り上げつつ、土日にもたまにふらっと来て仕事するスタイルが性に合っています。
住宅補助など職住近接を助ける制度との相性も良いですね。5G回線の普及でリモートワークのインフラが一気に整えばある程度解決しそうですが、家だと捗らない人もいますからね(私もその一人)。
それでも保健室は必要?
セルフマネジメント頑張ろうね、とは言っても、皆が常にセルフでマネージできるわけないです。人間だもの。
保健室的な役割を果たす人は必要で、個人の事情をはじめとした踏み込んだ相談ともなると、組織の代表に集約されるパターンが多そうです。
ティール組織でも「個人の使命と組織の目的の交差点を探るために制度をつくる」という話があります。保健室でのコミュニケーションから制度が提案されていくこともままあります。
そんなこんなで
セルフ・マネジメント組織、このような感じで有機的である分、秩序立っていない部分が多々あり、ティール組織でいう「創造的カオス」に強みを見出していくというところで、秩序味の強い組織にいる人ほど抵抗を強く感じるものではあります。慣れれば逆に、秩序組織には戻れなくなるんでしょうけどね。
人数が増えても大丈夫、みたいに本では書かれているんですけど、人数が増えながらもこの組織の在り方を守っていく、というのは実際、大変と言えば大変です。
人数が増えれば増えるほど、組織に目を向ける一人あたりの当事者意識は下がっていく力学が働きますからね。
イナバの物置みたく、100人乗ってもだいじょーーぶ、と言い張れるような組織をまずは作っていきたいものです。
本日の現場からは以上です。