広く言えば行動経済学というテーマで語られてきたことで、
ゲーミフィケーションであったり、
最近だとノーベル経済学賞でのナッジ理論や
ブロックチェーンのPoW・PoS論争であったり、
人の行動が集約される先をどこに見るかについての
ケーススタディは枚挙に暇がありませんね。
ただ制限のためのルールではなく、
ルールを設けることで人に対して
ある方向へのエネルギーが働く、というのはあって、
報酬と懲罰と淘汰、この3つの要素の黄金比を見出すことが、
サービスづくりや組織づくりの醍醐味と言えるのかもしれません。
アーキテクチャ、という言い方もされてきましたね。
報酬 = インセンティブ
懲罰 = ペナルティ
淘汰 = トウタ
いやトウタってなんでそのままやねんって話ですけど、
淘汰って英語にするとselectionで、
自然淘汰でnatural selectionになるみたいで、
なんか選りすぐる様なニュアンスが
ちょっとハマっていない感じがするんですよね。
ならもうトウタでいいやん、みたいなね。
無意識下に潜む“トウタ”のワナ
例えば組織の中でプレゼンの機会が多ければ多いほど
声の大きな人が目立ちやすくなるとも言えるでしょうし、
社長室や部署で部屋が分かれる組織と
仕切りの無いワンフロアの組織では、
空間が仕切られている方が自ずと
クローズドなコミュニケーションが多くなり、
派閥が生まれやすくなると言えるかもしれません。
そういった制度や仕組みの一つ一つが及ぼし得る作用が
人々の無意識下でどのような行動を促し、
どのような性質を持った人に自ずと偏っていくか。
意図的に意識下に置かれるインセンティブとはまた異なる要素、
行動と性質の方向付けをなすトウタ的な要素は意外に侮れないもので、
インセンティブと相互に作用した結果、人々の行動がどこに集約されるのか、
これに目を向けることを怠ってしまうと、
時にその歯車が狂い、組織やサービスが良からぬ方向へと
暴走していってしまう例もある様に見えます。
こういった心理的バイアスを逆手にとる様な話はともすれば
人が分かりやすいインセンティブの元に
合理的な選択をとる前提で設計されがちで、
一見ちょっとしたゲーミフィケーションの話にも思える
ナッジ理論にノーベル賞をというのが
またセンセーショナルな話と言いますか、
インセンティブというニンジンを直接的にぶら下げない、
ナッグではなくナッジ、という視点は
「ホモエコノミクス=経済的合理人」を是としてきた行動経済学に
血を通わせた一つの転換点とも見れるのではないかと思っています。
ナッジ=ひじで軽くつつく というところに
その力のさじ加減や方向を繊細に考えよう、
みたいなニュアンスがある様な感じがして、
分かりやすい競争原理とはまた別の生態系や
カルチャーをつくっていくならば、
もっとナッジできる方法は無いか、
という視点で検討してみるのは
時として有効そうですね。
以前エンジニアをやっている友人達に薦めてもらったこちらの本も、
組織づくりや環境づくりにおけるナッジを考える上で示唆に富んだ内容でした。
ソフトウェア開発のプロジェクト進行中に起こる問題は技術的なものよりも
むしろ社会学的な問題が多い、みたいな話が
マネジメントや作業環境など様々な観点から語られています。
特にプロマネの方にはオススメです。
さらっと書籍紹介を入れられたところで、
本日は筆を置きたいと思います。